オランダ留学記

トラブルが寄ってくる体質。2022年8月から2023年7月までオランダの大学に交換留学にきています。純ジャパ。

中世を歩く。栄光と衰退と。ブルージュ1。クリスマスマーケット編。

霜月と師走のはざま、ブルージュに一泊二日で行ってきました。歴史地区全体が世界遺産に登録されているブルージュはどこを切り取っても絵画のようで、その幻想的な風景に、中世が歴史から蘇ったような不思議な感覚に襲われました。通常写真は意図的に狙って撮影されるため、実在の景色より写真の方が映えることは最近では当たり前ですが、ブルージュは写真よりもそれ自体が美しい街でした。これから数回に分けてブルージュ編をご紹介したいと思います。1回目はベルギーにおいて、ブリュッセルと1、2を争う人気のブルージュのクリスマスマーケットをご紹介します。

 

世界遺産に登録されている「ブルージュの鐘楼」とクリスマスマーケット

 

ブルージュはベルギー北西に位置する西フランダース州の州都です。この「ブルージュ 'brugj' (桟橋)」という名が文献に登場するのは9世紀。

運河によって北海と繋がるブルージュ
Photo by: Bruges - Wikipedia

ブルゴーニュ公国の首都であったブルージュは北海と繋がる恵まれた地の利を活かし、13世紀から15世紀、ヨーロッパ有数の国際貿易都市として繁栄しました。世界初の証券取引所が作られたのもこの時代のブルージュでした。

 

マリー・ド・ブルゴーニュ
(1457−1482)
街の衰退は、我らの美しきプリンセス、と幼い頃から国中から愛されたブルゴーニュ君主、公女マリーの落馬という不慮の死によって始まります。マリーの後を継いだ彼女の夫で、のちの神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世とブルージュの有力者が対立。ブルゴーニュ宮廷は街を去り、国際商人たちもそれに続きました。時を同じくして、北海の土砂が運河に堆積、ブルージュは貿易都市としての役目をアントワープに譲り、街は歴史の表舞台から姿を消します。ブルージュが再び脚光を浴びるのは、19世紀末。衰退のまま中世の面影を残すこの街は裕福なヨーロッパ人の観光地として再発見されます。2000年には街全体が世界遺産に登録され、現在年間800万もの観光客がブルージュを訪れています。
参考文献:Visit Bruges. The history in a nutshell (ブルージュ歴史概略).

De geschiedenis in een notendop - Visit Bruges

Photo by: 

Marie de Bourgogne, Duchesse de Bourgogne... - medieval autumn

 

ヨーロッパの市場統合図(左:〜1400 右:〜1600)
当時の貿易手形のやりとりの関係を示した図。左図をみると、当時のブルージュは、バルセロナベネツィアと並ぶ三大市場であり、北ヨーロッパ最大の国際商業都市であったことがわかる。16世紀にはブルージュは衰退し、近隣のアントワープアントウェルペン)が台頭している。

中世の時代、ブルージュはロンドンやパリを凌ぐ、最先端の国際都市でした。

 

さて、ロッテルダムからブルージュはお馴染みの長距離バスFlixBusを利用しました。電車よりも少し時間はかかるものの、料金が安いこと、ストライキの影響を受けないこと(旅行中、ベルギー鉄道は絶賛ストライキ中)、直行便も多く乗り換えが少ないこと、などの理由からバスを利用することが多いです。

 

ただ、渋滞にはまり、時間が遅れることもあります。この日は約1時間の遅延発生。

 

この時点でバスに乗って4時間。ブルージュの標識が見えて、やっと高速を降ります。ちなみにオランダやベルギー、ドイツの高速道路は無料です。

 

ホテルへまず向かいます。街に足を踏み入れて最初に思ったことは、道が清潔であるということです。ヨーロッパあるある、湧いてんだろうか?と思うようなゴミ散乱が見当たりません。景観を保つため、こうした努力も行われているようです。うん、いい街。

 

マルクト広場までやってきました。この時点で、16時半。朝紅茶を飲んだきりなので、何か食べに行きたいと思います。

切妻型のギザギザの屋根とカラフルな色合いのギルド(商工業者組合)ハウスは一部カフェやレストランとして利用されていました。

マルクト広場のクリスマスマーケットの様子。

 

さて、軽く食べようと思って向かったのは、ベルギーのパンの有名店。Le Pain Quotidienのブルージュ店。

 Le Pain Quotidien Belgium

 

店の名前は、The daily bread、毎日のパンという素朴な名前ですが、なかなかおしゃれな店でした。調べたら、芝公園店など日本にも店舗あるみたいです。日本すごいな、ほんとなんでもある。

 

頼んだのは、ベルギーだけど、イタリアンタルティーヌ。タルティーヌはオープンサンドのことで、こちらでメジャーな軽食です。値段は€15.45でそれほど軽くありませんが、ヨーロッパの外食は概して高いので、おいしかったし良いとします(まずくて高いとこもたくさん)。オーガニックチーズセットは、ゴーダチーズとヤギのチーズで、€3.95でした。

 

店を出たらもう日が落ちかけていました。暗くなるとイルミネーションで雰囲気が倍増してきます。

ブルージュはクリスマスマーケットが二箇所で開かれていて、こちらはシモン・スティーブン広場のマーケットです。

何気ない通りまで美しい。

何の音だろうと振り返ってみたら、

馬の足音が石造の街に反響していて、その大きさに少し驚きました。

馬の軽やかな足取りは優雅でつい見入ってしまいます。馬車には馬糞受けも付いていて、道が汚れないように配慮されていました。ちなみにロッテルダムの警察騎馬隊は落とし物を道にばら撒いていきます。

 

ブルージュはチョコレートの街。チョコレートショップが街中に溢れています。こういう詰め合わせ、子供がもらったら嬉しいだろうな。

 

とりあえず猫グッズ、犬グッズ作っとけば売れるでしょ、というのは世界共通。実家の猫に似てて欲しくなる。留学中は血中犬猫濃度が低下しているので、些細なことで釣られそうになる。

 

マルクト広場で行われているクリスマスマーケットまで戻ってきました。ブルージュはコンパクトで、徒歩で回れます。

 

クリスマスツリーに結んである白い紐には、願い事が書いてあります。

ちゃきちゃきと働くソーセージ屋台の女性。手早い仕事ぶりで次々にお客さんを捌きます。

 

ブラックソーセージと玉ねぎのソテーのサンドウィッチ、€4.5。特設のベンチでいただきます。

正面には鐘楼。

 

横は州庁舎
そして周りから聞こえる楽しそうな声。
うん、よき哉。

 

Savoyarde(サヴォアヤルド)はフランス風のチーズフォンデュ。人気です。

本当に美しいです。日帰りしようと思っていたのですが、クリスマスマルクトは夜見るものだよ、というこちらの友人の意見に従い、宿泊しましたが、確かに正解でした。

街が煌めいています。

石畳を歩くと結構足に来て疲れるので、一度ホテルに戻り、少し休んでから夕食に出かけました。

www.poulesmoules.be

17世紀の建物をリノベーションしてレストランにしているそうで、あの壁、400年前のか、と思いながら眺めていました。

ムール貝が有名なお店ですが、今回はこちら。ベルギー名物、Carbonnade(カルボナード)。英語だとFlemish Beef Stew(フランドル風ビーフシチュー)牛肉をベルギービールで煮込んだシチュー。肉がごろごろ入っていて、ほろほろ。ソースはビールの風味がほのかに残っていて、これは本当においしかった。パンとサラダ、フリッツがついて€23。3000円ちょっと。

 

レストランを出たら、霧がかなり降りてきてました。

鐘楼も霧に包まれています。

ただの駐車場がこれほど絵になる街が他にあるだろうか。(まあ、あるだろうけど、そう多くはないのでは、と思います。)

霞む運河。幻想的でした。あの橋を渡ったらホテルです。

 

次回は、翌日の街歩きを綴って見たいと思います。ミケランジェロの作品がある聖母教会やベルギービール好きなら垂涎のブルージュ・ゾットの醸造所見学など、ブルージュは小さい街ながら見所がたくさんあって、来る前は正直2日もいて飽きるだろうな、と思っていたのが、見事に裏切られました。