オランダ留学記

トラブルが寄ってくる体質。2022年8月から2023年7月までオランダの大学に交換留学にきています。純ジャパ。

ブルージュ旅行2。聖母教会、ミケランジェロとマリーと猫に会う。

朝の散策を終えた後は、聖母教会 (The Church of Our Lady in Bruges) に向かいました。

 

okuno.hatenadiary.com

 

聖母教会は、ブルージュが最も繁栄していた中世に建造されたカトリック教会です。イタリア以外では三箇所にしかない貴重なミケランジェロの作品や、最後のヴァロワ・ブルゴーニュ家君主にて絶世の美女として、現在でもブルージュ市民に愛される公女マリーの見事な霊廟が見所です。

マリー・ド・ブルゴーニュ前回とは別の肖像画
Image by: 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/83/Niklas_Reiser_001.jpg

 

今回ブルージュを観光するにあたって、ネット経由でミュージアムパス、Musea Bruges Cardを購入しました。

www.museabrugge.be

13歳から25歳までが€24、26歳以上が€32です。3日間有効ですが、3-4箇所ぐらい回るだけで1日でちゃんと元が取れます。

使ってみたこのカードの良い点を挙げると

  • いちいちチケットを買う手間がいらない
  • 機会の損失を免れることができる。有料ならいいや、と素通りする博物館や展示館も、まあ見てみっか、という感じで気軽に入れる。(そして、そこですごいものに出会ったりする)
  • 時間ないけど有名なあれだけ見てこうと、超短時間滞在という贅沢な使い方ができる。
  • 美術館の綺麗なトイレを借りるためだけにも使える(有料のところも一部あり)。

このように、このパスは非常におすすめです。

 

聖母教会自体は無料で入れますが、博物館は有料になっています。(パスで無料)

煉瓦造りの尖塔が美しい。115.5mは煉瓦造りの建造物としては世界第2の高さ(建設当時は世界一)だそうです。

まずは無料エリアから。

羊飼いの礼拝 (deCrayer, 1662)

絵の上方に神様も特別出演。キリストと神様、"よっ!"ってお互い挨拶交わしてるとこが個人的この絵の見所。

 

聖カトリナとキリストの神秘の結婚

夢の国のはなし。介添人は聖母マリア。宗教画あるある、マリアがどう見てもキリストの妹にしか見えない件。関係ないけど、犬が愛犬とそっくり。

 

光が差し込む教会内部。

 

それでは有料エリア(博物館)に入っていきます。

 

懺悔室。彫刻が美しい。

 

観音開きの祭壇画。羊飼いの礼拝 (Pourbus, 1574)
作者は左扉手前。本業は弁護士。息子たち(左扉奥)、奥さん、娘たち(右扉)と一家総動員。

 

聖餐式礼拝堂。
カトリックの人たちがもらう丸いウエハースみたいなやつ(聖体)をしまっておいたところ。

あと、ヨーロッパあるあるですが、こんな感じで埋葬されている墓碑の上を普通に踏んで歩いていく。なんか、お墓の上を歩くって日本人的には躊躇します。

 

聖体についての余談ですが、以前バチカンのミサに出席する機会があったとき、聖体(丸いウエハース)をミサで配っていたのですが、カトリック教徒じゃないからあなたは貰わなくていいからね、と言われて、ほとんどの人が貰ってるのに、えーっとなんだか少し残念だったという思い出があります(つまり聖体の重要さをまったく理解してない。無知って怖いですね)。そもそもそんなお前がなんでバチカンでミサ出てるん?というツッコミを自分で今自分にしてる。

 

それにしもバチカンは本当に素晴らしかったです。感動しました。

バチカンのミサの様子。内省できる場でした。

 

聖母教会に話を戻します。

ここは、教会のお隣に住むブルージュの有力者だったグルトゥース家の特別礼拝室。
2階家族用、1階友人用。

なんと自分の家と教会を建物で繋いで、自分んちから教会のミサに出席できるようにしたらしい。教会にふつーに行けよ!と思うけど。うーん、金と権力のある人っていろんなこと考えるものなんですね。例えるなら、東大寺の隣に住んでるから、通路で繋いじゃおうってことですよね。すごい発想だな。しかも右の扉は、聖体(ウエハース)を配るため、司祭がわざわざ出向く用らしい。いやいや、自分で取りにいけよ!って再度、説明板読みながら突っ込んだ。

ここから石棺室です。

部屋の壁にかかっていた絵。

最後の晩餐 (Pourbus, 1562)

前出の羊飼いの礼拝を描いた同じ作者の作品。食事の前に、キリストは弟子の足を洗ってあげたらしく、だから弟子たちをみな裸足で描いたそう。写真手前、こちらに背を向けている、英王室の次男みたいな風貌の赤毛の男が裏切り者ユダ。

 

石棺に施された絵。

中世の死後の世界観を表しているらしい。
見切れているけれど、頭の方にキリスト、足の方にマリア。側面はお香で死者を天国に導く天使。

中世は亡くなった当日に埋葬したらしく(それだけ伝染病が恐ろしかったのだろうと思います。)石棺絵師は、フリーハンドでちゃっちゃと絵を描く必要があったそうです。だから、簡単な感じの絵になっています、と説明していましたが、イラスト画みたいで十分キャラクター性やデザイン性があるな、と感心しました。

他にも、なかなかよいデザインの石棺画がいろいろあったのですが、やはり用途を考えると重いので省略します。

 

 

次は、マリー・ド・ブルゴーニュとその父シャルル突進公の霊廟です。

向かって右がシャルル突進公、左が彼の一人娘マリー・ド・ブルゴーニュ

日本だと祭壇の方に頭を向けますよね。こちらは反対です。

 

 

シャルル突進公は、王の印ライオンが足元に。

領土拡大戦争中にナンシーで戦死。フランス王家のライバル的存在だった人物。どこまで本当なのかわかりませんが、遺体は狼に半分食べられていたという話も伝えられてます。

 

 

マリーの足元には犬

 

マリーの彫刻の顔の部分は、彼女のデスマスクから型をとったそうです

1477年に父、突進公が亡くなってから25歳で急死するまでの5年間、ヨーロッパ一の富国、ブルゴーニュ公国を統治。夫のマクシミリアン一世の遺言で、彼の心臓は死後マリーと一緒に埋葬されたそうです。美人ガチャも生まれガチャも引いたのに、結構深い谷もあった人生。安らかにお眠りください。

 

そして、とうとうブルージュ聖母教会最大の見所です。

 

ミケランジェロ作「聖母子像」

こうして収められていると小さく見えるけれど、2メートルくらいある彫刻。1504年ブルージュの裕福な商人がイタリアで、なんとミケランジェロ本人から購入し、その後聖母教会に寄進。ミケランジェロが生きている間にイタリアを離れた唯一の作品だそうです。

 

ミケランジェロの傑作、ピエタが破壊された事件を受け、こちらもガラス張り、さらに必要以上に近づけないようになっているのは残念。

このマリアの悲しげな顔が、バチカンで見たピエタとだぶって、ああ確かにこれはミケランジェロの作品だなと思いました。

 

そして、超いいものってやっぱ欲しいんだよねー!てことで、ナポレオンもヒトラーも征服した際、この聖母子像を教会から取り上げたそうで、2度ブルージュを離れています。戻ってこれてよかったね。

 

ナチスからの美術品奪取物語は映画にもなってます。その名も「ミケランジェロ・プロジェクト」。この映画見た。救出できなかった傑作もあったんだろうなと破壊シーンで残念に思いながら。予告の13秒と1分18秒に聖母子像が出てきます。

 


www.youtube.com

 

なんかみんなすごい誇らしげですね。よかった、よかった。

教会の外に出てきました。

この狭い道、なんか中世ぽっくて引き込まれます。その動線で尖塔を見上げると、空の青さが目に染みる。

観光客も増えてきました。

教会から出てすぐ出会ったのは猫。

どうやらここの家の猫らしい。レンガの色と猫のテラコッタみたいな色と絶妙マッチ。

君、ほんと、ばえるね。

さすが全てが美しい街、ブルージュ。猫もあなどれません。それでは今回も長くなったので、ここで終わりにします。次からは、もう少しサクサク進めるようにしたいと思います。