聖母教会の続き、ブルージュ最終編です。
ご存知の方も多いと思いますが、ブルージュはピエロの顔のラベルが印象的な名ビール、ブルグズ・ゾットがあることでも有名です。
ブルグズ・ゾット(ブルージュのほうけもの、ばかもの)は、絶世の美女と謳われたブルゴーニュ君主マリーの亡き後を継いだ彼女の夫であるマクシミリアン一世の言葉に由来します。
Image by: マクシミリアン1世 (神聖ローマ皇帝) - Wikipedia
ブルージュの有力者層とマクシミリアン、片方はヨーロッパ一の商業の王者、もう一方は神聖ローマ帝国の生まれながらの王者、どちらもプライドは top of the world に高いだろうし、当然の結果なんでしょうが、激突。ブルージュ市民はなんとマクシミリアンを牢に閉じ込めるという、現在の過激環境活動家もびっくりな強硬手段を取ります。その後牢から出してもらったところで、当然マクシミリアンが許すはずもなく、ブルージュに精神病院を建てたいという市民の願いに対して、こう言い放ちました。
ブルージュの全ての門を閉じるがよい。そうしたならば、そこが精神病院だ。
このマクシミリアンの痛烈な皮肉が、ブルージュの錯乱者たちというニックネームをブルージュ市民にもたらしました。当時は場が凍りついたでしょうが、今では、逆手におれらクレージーなやつらなのさ、とブルージュ市民はなかなかにこの名を気に入っているそうです。
参照:https://www.brugsezot.be/en/the-story#maximiliaan
さて、その名を冠する名ビール、ブルグズ・ゾットを醸すのが、ここドゥハルヴマーン (De Halve Maan) 醸造所です。全てのブルグズ・ゾットはここで製造され世界中で売られています。
Photo by: https://www.brugsezot.be/en/the-brewery
2016年に、街の石畳を保護するため、ここで作ったビールを瓶詰めする工場まで3.3キロのパイプラインを地下を通したことは日本でもニュースになりました。1分28秒あたりからこの壮大な計画を説明しています。
ツアーはクラシックツアー(€15、ビール1杯つき)とXLツアー(€24、ビール3杯つき)の2種類があります。ツアーでは醸造所見学と、実はブルージュ1の絶景が眺められると評判の屋上にも登らせてもらえます。そしてなんといっても、世界でここでしか飲めない、出来立て無濾過のブルグス・ゾットを飲むことができるのが最大の魅力です(他の銘柄も選べます、もちろん無濾過)。見学なしでも、生ゾットは醸造所に併設のレストランやバーでも提供されています。
さて、ここでまさかの携帯バッテリー切れ。残念なことに黄金色に輝く生ゾットの写真がありません。味は、どうしたら大麦からこんなにフルーツの香りがするんだろうというくらいの爽やかさ。そのあと旨味とコクがきて、うん、ご馳走様でした。
とは言っても初めて飲んだので、瓶詰めとの比較は全然分かりませんでしたが、”やっぱさ、無濾過は美味しさが違うよね?” という他のツアー客の笑顔には、”ですよね!” とさも味のわかるやつのように合わせておいたこともここにご報告しておきます。でも、実際素晴らしく美味でした。
ということでバッテリーを取りにいったんホテルへ。スマホを無事蘇生させ、市庁舎(City Hall)へ向かいました。
疲れたので途中で甘いもの補給。
立ち寄ったのは Chez Albert (シェ・アルベール)。
ブリュッセルのダンドワよりもここの方が個人的には美味しいと思いました。
忠誠の印としてカール5世に捧げられた暖炉。カール5世はマリーとマクシミリアンの孫です。
次は、14時に予約していた鐘楼に登ります。13世紀の建造物で、世界遺産に認定されている歴史地区にありながら、さらに、”ベルギーとフランスの鐘楼群”の一つとして別の世界遺産に登録されています。
カリヨン(組み鐘)が鳴り始めました。
ブルージュのカリヨンは、大小さまざまな47個(重さ27.5t)の鐘で構成されています。世界遺産の景色に世界遺産の鐘が響く。
帰りのバスまで1時間なのでここで一度ホテルに戻って、荷物を受けとり、帰り道にある博物館に少し寄ってバス停へ向かうことにしました。
最後に向かったのは、
グルトゥース博物館 (The Gruuthusemuseum) です。
聖母教会のすぐ隣にあるブルージュの大貴族の宮殿が博物館となっています。
ブルージュ全盛期に軍事官及び外交官として活躍。確かに頭良さそうに見える。その後マクシミリアンとの対立により失脚。
この展示の仕方、センスがいいなと思いました。壁の黒、赤、続いて額縁の黒、絵画の背景の赤、そしてルイの衣服の黒と、配色が絶妙で、かっこいい。
そして、グルトゥース家といえば、これです。わざわざ出かけなくていいように、聖母教会と自分ちを連結しちゃったびっくり一族。
足早に見学して、ブルージュ旧市街を後にします。
バスでロッテルダムに帰ります。となるはずが、
ここで問題発生。
なんと、バスのチケットの日付を間違って抑えており、バスに乗れませんでした。
やっちまったと思ったけど、呆然としても仕方ないので、目の前のブルージュ駅に駆け込み、やる気のなさそーな駅員さんから切符購入。とりあえず、Google先生の指示により、まずブルージュからブリュッセルに行き、ブリュッセルからタリス(高速鉄道)でロッテルダムまでいくことにする。
ということでブリュッセル南駅。南駅は治安が悪いことでも有名。30分だけど、スタバに入って待つかと構内のスタバへ。
乗り込んで1時間ほどでロッテルダム到着しました。
ということで、ブルージュ編終了です。
中世の繁栄のままに時を止めた街と聞いたとき、600年間何も手を打たなかったんかい、とつっこみたくなりましたが、もちろんそんなわけはなく、止まらない時の中でたくさんの人々の生活が当然そこにあり、その中で貧困や財政難に苦しみながら、発展はできないものの、街を荒廃させることなく、文化財を守り、歴史を作ってきた人々の努力が当たり前にあったはずです。その努力の結果として、中世の残光をふらりと遊びに行った日本人が垣間見ることができたのはとてもありがたいことだと思っています。
ラフな文章で読みにくいところも多々あったと思いますが、今回もお付き合いいただきありがとうございました。