オランダ留学記

トラブルが寄ってくる体質。2022年8月から2023年7月までオランダの大学に交換留学にきています。純ジャパ。

ブルージュ3。名ビールを聴き、鐘の響きを味わう。

聖母教会の続き、ブルージュ最終編です。

okuno.hatenadiary.com

 

ご存知の方も多いと思いますが、ブルージュはピエロの顔のラベルが印象的な名ビール、ブルグズ・ゾットがあることでも有名です。

人気漫画もやしもんにも出てきます。

ブルグズ・ゾット(ブルージュのほうけもの、ばかもの)は、絶世の美女と謳われたブルゴーニュ君主マリーの亡き後を継いだ彼女の夫であるマクシミリアン一世の言葉に由来します。

マクシミリアン1世(1459- 1519)
Image by:  マクシミリアン1世 (神聖ローマ皇帝) - Wikipedia

ブルージュの有力者層とマクシミリアン、片方はヨーロッパ一の商業の王者、もう一方は神聖ローマ帝国の生まれながらの王者、どちらもプライドは top of the world に高いだろうし、当然の結果なんでしょうが、激突。ブルージュ市民はなんとマクシミリアンを牢に閉じ込めるという、現在の過激環境活動家もびっくりな強硬手段を取ります。その後牢から出してもらったところで、当然マクシミリアンが許すはずもなく、ブルージュに精神病院を建てたいという市民の願いに対して、こう言い放ちました。

 

ブルージュの全ての門を閉じるがよい。そうしたならば、そこが精神病院だ。

 

このマクシミリアンの痛烈な皮肉が、ブルージュの錯乱者たちというニックネームをブルージュ市民にもたらしました。当時は場が凍りついたでしょうが、今では、逆手におれらクレージーなやつらなのさ、とブルージュ市民はなかなかにこの名を気に入っているそうです。

参照:https://www.brugsezot.be/en/the-story#maximiliaan

 

さて、その名を冠する名ビール、ブルグズ・ゾットを醸すのが、ここドゥハルヴマーン (De Halve Maan) 醸造です。全てのブルグズ・ゾットはここで製造され世界中で売られています。

De Halve Maan は英語だと、The Half Manです。なので半月男がマーク。
Photo by: https://www.brugsezot.be/en/the-brewery

 

2016年に、街の石畳を保護するため、ここで作ったビールを瓶詰めする工場まで3.3キロのパイプラインを地下を通したことは日本でもニュースになりました。1分28秒あたりからこの壮大な計画を説明しています。

www.youtube.com

 

 

こちらの11時半からのビール醸造所見学に参加してきました。今回はクラシックツアーに参加。

ツアーはクラシックツアー(€15、ビール1杯つき)とXLツアー(€24、ビール3杯つき)の2種類があります。ツアーでは醸造所見学と、実はブルージュ1の絶景が眺められると評判の屋上にも登らせてもらえます。そしてなんといっても、世界でここでしか飲めない、出来立て無濾過のブルグス・ゾットを飲むことができるのが最大の魅力です(他の銘柄も選べます、もちろん無濾過)。見学なしでも、生ゾットは醸造所に併設のレストランやバーでも提供されています。

 

待ち合わせ場所はギフトショップ。ツアー開始まで、帰りのお土産について予習するスタイル。

 

ツアー開始。温度は1度の差が大問題になるため、繊細に管理しているそうです。

これが、出来立てのブルグズ・ゾットです。写真と違い、実際は黄金色が本当に美しいです。

1856年創業の醸造所。

かつて使用していた器具や機械、

現在も使われている機械や設備の説明を受けて行きます。階段の上は

おー、大量のホップ。生のホップ(乾燥中だけど)初めてみました。

大麦やホップなどのビールの原材料や、製造ついて説明を受けます。

このきつい傾斜の階段を上がっていくと

噂のルーフトップに出ました。

立ち登る湯気が絶景に温かみもプラスし、なお良し。

つい最近まで使用していたタンク。昔はここから人が入って中を洗っていたそうです。大変だったのよー、と話していました。

さて、ここでまさかの携帯バッテリー切れ。残念なことに黄金色に輝く生ゾットの写真がありません。味は、どうしたら大麦からこんなにフルーツの香りがするんだろうというくらいの爽やかさ。そのあと旨味とコクがきて、うん、ご馳走様でした。

 

とは言っても初めて飲んだので、瓶詰めとの比較は全然分かりませんでしたが、”やっぱさ、無濾過は美味しさが違うよね?” という他のツアー客の笑顔には、”ですよね!” とさも味のわかるやつのように合わせておいたこともここにご報告しておきます。でも、実際素晴らしく美味でした。

ということでバッテリーを取りにいったんホテルへ。スマホを無事蘇生させ、市庁舎(City Hall)へ向かいました。

ショーウィンドーを覗き込みながら、

街歩きを続けます

このチョコレートボックス、とても素敵でした

ブルージュのレースは王侯貴族や高位聖職者に愛され、貿易業衰退後の街の経済を支えました。

 

疲れたので途中で甘いもの補給。

立ち寄ったのは Chez Albert (シェ・アルベール)。

めちゃくちゃ美味しかった。いちごの酸味と甘すぎない生クリームも絶妙。
ブリュッセルダンドワよりもここの方が個人的には美味しいと思いました。

 

お客さんが途切れない人気店

立派な市庁舎前のクリスマスツリー。白いリボンは 願いごとが書いてあります。

市庁舎隣の公文書館を見学していきます。かっこいいマダムが入り口にいました。

評議員室。右側に在りし日の評議員室の絵が飾られています。同じ肖像画が描かれてあったりしていてなかなか興味深い。

カール5世の暖炉
忠誠の印としてカール5世に捧げられた暖炉。カール5世はマリーとマクシミリアンの孫です。

真ん中がカール5世。股間を強調するコッドピース(股袋)という当時の流行装飾具をつけてます。このもっこりが悪目立ちしてて変じゃんと思うのですが、流行ってときに滑稽なのは現在も同じかもしれません。

 

 

次は、14時に予約していた鐘楼に登ります。13世紀の建造物で、世界遺産に認定されている歴史地区にありながら、さらに、”ベルギーとフランスの鐘楼群”の一つとして別の世界遺産に登録されています。

人数制限があるので、事前に予約するとスムーズに入れます。

暗くて狭い階段を366段登っていく。幅狭で歩きにくいにもあって、疲労感はんぱない階段。前後して登ったアメリカ人の気さくなおばちゃんと励まし合いながら登る。アメリカ人、フレンドリーでノリがよい人が多いから、一番付き合いやすい気がする。

到着。こちらは聖母教会側。風が気持ちいいー。

こちらは市庁舎側。クリスマスツリーが見えます。

マルクト広場側。クリスマスマルクトが眼下に広がってます。

カリヨン(組み鐘)が鳴り始めました。

ブルージュのカリヨンは、大小さまざまな47個(重さ27.5t)の鐘で構成されています。世界遺産の景色に世界遺産の鐘が響く。

 

降りてきました。

帰りのバスまで1時間なのでここで一度ホテルに戻って、荷物を受けとり、帰り道にある博物館に少し寄ってバス停へ向かうことにしました。

 

人気の運河ツアー。ホテルの方もお勧めしていました。今回は時間がないので断念。

最後に向かったのは、

グルトゥース博物館 (The Gruuthusemuseum) です。

聖母教会のすぐ隣にあるブルージュの大貴族の宮殿が博物館となっています。

グルトゥース家の中で、最も有名な当主、ルイ・ド・グルトゥース
ブルージュ全盛期に軍事官及び外交官として活躍。確かに頭良さそうに見える。その後マクシミリアンとの対立により失脚。

この展示の仕方、センスがいいなと思いました。壁の黒、赤、続いて額縁の黒、絵画の背景の赤、そしてルイの衣服の黒と、配色が絶妙で、かっこいい。

 

暖炉の豪華さもすごいけれど、床の配色とデザインの方が印象的でした。

あたりまえだけれど、全て手書き。繊細な挿絵と美しい書体。

大きな鍋。大家族とたくさんの使用人の食事をここで作ったのだろう、と窺い知れる。

これ、ハープシコード(ピアノの原型)なのかな?鍵盤見ると触りたくなります。白鍵の上をさーっと手を滑らせるの昔からの癖。たぶんそういう人が多いから、触るな、との表示。

やたら繋げばいいってもんじゃないと個人的には思うけど、それぞれ年号が入っているところを見ると、歴史を繋いだ意味あるものなんだろう、と推察。

小銭入れ。皮って長持ちするな、と感心しました。手入れしたらまだ使えそうな感じでした。

そして、グルトゥース家といえば、これです。わざわざ出かけなくていいように、聖母教会と自分ちを連結しちゃったびっくり一族。

聖母教会側からみたグルトゥース家。これ壁ぶち抜いたんだろうな。

こちらはグルトゥース家側2階から見下ろす教会。ここから礼拝していたそうです。

足早に見学して、ブルージュ旧市街を後にします。

 

石畳を、ガラガラと盛大な音でスーツケースを引きずって街を出る

バスでロッテルダムに帰ります。となるはずが、

ここで問題発生。

なんと、バスのチケットの日付を間違って抑えており、バスに乗れませんでした。

 

やっちまったと思ったけど、呆然としても仕方ないので、目の前のブルージュ駅に駆け込み、やる気のなさそーな駅員さんから切符購入。とりあえず、Google先生の指示により、まずブルージュからブリュッセルに行き、ブリュッセルからタリス(高速鉄道)でロッテルダムまでいくことにする。

ということでブリュッセル南駅。南駅は治安が悪いことでも有名。30分だけど、スタバに入って待つかと構内のスタバへ。

もう19時で構内の飲食店が閉まってきているので、スタバは混んでいた。

右奥に座り込んでる人たちのような方々が構内にちらほら。すごい声で時々喚いてる。確かに治安が良いとは言えないけど、まあ近づかないと絡まれないのでOK。

タリスが来ました。かっこいい車体。

乗り込んで1時間ほどでロッテルダム到着しました。

ただいまロッテルダム

ただいまくま。

ということで、ブルージュ編終了です。

中世の繁栄のままに時を止めた街と聞いたとき、600年間何も手を打たなかったんかい、とつっこみたくなりましたが、もちろんそんなわけはなく、止まらない時の中でたくさんの人々の生活が当然そこにあり、その中で貧困や財政難に苦しみながら、発展はできないものの、街を荒廃させることなく、文化財を守り、歴史を作ってきた人々の努力が当たり前にあったはずです。その努力の結果として、中世の残光をふらりと遊びに行った日本人が垣間見ることができたのはとてもありがたいことだと思っています。

ラフな文章で読みにくいところも多々あったと思いますが、今回もお付き合いいただきありがとうございました。