ウィーン2日目の午後はベルヴェデール宮殿からスタートです。ベルヴェデールは門外不出の「接吻」をはじめ、世界最大のクリムトのコレクションを所蔵するオーストリアを代表する美術館です。
屋敷は、上宮(Upper Belvedere)と下宮( Lower Belvedere)から成り立っていて、高低差のある二つの宮殿をバロック造園建築の最高峰と言われている庭が繋いでいます。
上の写真でも分かりますが、傾斜地に立っているため、特に上宮からは美しいウィーンの街が一望できます。そのため、美しい眺め(ベルヴェデール)と名付けられたそうです。
上宮のエントランス正面には大きな池もあります。
世界的に人気なクリムトが所蔵されている美術館なので、時間枠で見学が指定されていますが、ウィーンパス購入者にはいつ訪れても入場できる特典があります。
観光地ってそれほどたくさん回れるわけでもなく、それを考慮するとこういう観光パスはすごくお得感があるわけではないですが、いちいちチケットを購入しなくてもよい便利さや、本来有料だったら寄らない場所が思いの外素晴らしかったなどの機会費用を買うという意味で、自分は観光地に行ったらパスを購入することが多いです。
天井に続く部分、立体彫刻のように見えますが、平面に描かれてます。絵画技術ってすごい。
上ばかり見て首が疲れました。
ベルヴェデール宮殿はハプスブルグ家に売却される前は元々彼の屋敷でした。
オイゲンはフランス貴族としてパリに生まれ、高い教育を受けて育ちます。しかし、母親の宮廷スキャンダルや容姿による差別のため、ルイ14世よりフランス軍将校になることを幾度となく拒否されます。屈辱と絶望を胸に、彼はフランスの宿敵ハプスブルクに仕えることを決意します。というよりも、志願した彼を拾ってくれたのがハプスブルクでした。
その後は、オーストリアの軍人として目覚ましい戦績をあげ続け、最強と恐れられたオスマン帝国、そして母国フランスを生涯苦しめ続けました。
教訓:人を見誤ってはいけない
彼が軍事の天才としてヨーロッパ全土に知られるようになった頃、フランスの宮廷人が、希望なんかないような子だったのに、と回想したそうです。
出典:https://de.wikipedia.org/wiki/Eugen_von_Savoyen
ベルヴェデーレ宮殿は、移民としてウィーンにやってきた青年が、覚悟と才覚で築き上げたつわものの夢の跡。彼は生涯独身だったため、死後、宮殿は姪の手を経て、ハプスブルク家に売却されました。
さて、次なるつわものはこちら。教科書で見たよ、お前ここにいたのか、の一枚。
実際はラバに乗って震えながら峠越えしましたが、ナポレオンからの画家への注文は
盛れ。加工しろ。
なので、こうなりました。俺に似せたってしょうがない、才能を感じさせろ、と言ったナポレオンは、人は如何にイメージに左右されるか、というそこのところよく分かってるなと思います。
宣伝ポスターは一枚じゃ到底足りないわけで、同じ構図の絵がこれをふくめて5枚制作されています。
おもろい顔大会も開かれていました
心を病んだ自分をモデルに制作したそうです。病んだ自分が制作の源ってすごい話だな、と思いました。
さて、ここからクリムトです。
これいい絵ですね。暖炉の火のはぜる音が聞こえてきそうな静かな絵です。
詳細な人物描写と幾何学的な背景の対比がおしゃれで、ウィーンの洗練を絵にしたらこうなった、みたいな絵。椅子の模様が、エジプトの目(ホルスの目)っぽいなと思ったら、やはりそうだそうです。
映画にもなったので有名な、ニューヨークのノイエ・ギャラリーにある、「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I(黄金のアデーレ)」にもホルスの目が使われてます。
ナチスによって個人から略奪され、戦後所属権を争った映画はこちら。それまでは、ここベルヴェデーレに所蔵されていました。
さて、次はクリムトの代名詞になっているこちらです。
まばゆい。金がここまで効果的に使われている作品って他にないと思います。クリムトは彫金師の息子だそうですが、生まれた家のリソースをフル活用してます。資源の最適活用が成功の基本ですが、クリムトもその一人。
金の使い方は尾形光琳の屏風にも影響を受けているそうです。
顔色の健やかさと、暗色の背景が印象的な絵。ここまで見たら、クリムトの絵が人気な理由分かってきた気がする。顔の表情が色鉛筆で描いたみたいに柔らかいから、モダンなのに親しみやすいんだ、たぶん。
堕落へと落ちるイヴではなく、性を肯定する女性美を描いたのだそう。女性が大好きすぎるクリムトが描いた全くエロくないヌード。後ろの冴えない顔のアダムはもはや霞。
クリムトが制作途中で亡くなったため、未完。未完ゆえの良さってあります。
クリムトの顧客は裕福で教養高いユダヤ系が多かったそうですが、この絵のモデルの女性もナチスの犠牲になりました。戦後、黄金のアデーレと同様に所有権が争われた一枚。こちらはオーストリアが所蔵。
クリムトは風景画も良き。
この埋め尽くす花の数がキューケンホフ公園を思い出させる。
接吻と似たような構図だなと思いました。俯いた姿に、聖母を模しているとの解釈もあるそうです、なるほどねー。(言われたらそう見える人)
果物がたわわに実った木々があって、こういうところでバカンスいいですね。
寝首をかかれてもこんなに喜ばれたら本望です、みたいな絵。
ベルヴェデーレでのTakeaways:
1. 人を見誤るな
2. イメージ戦略を持て
3. リソースをフル活用せよ
以上。
注:美術館です
さて、有意義な学びがあったとこで、ここからはウィーン中心地をブラタモリします。
シュテファン大聖堂の手前で左折してグラーベン通りへ。
よく一本の柱をここまでデコったなということに感動。これはマリア・テレジアの祖父が建てたもの。ペストは何度も定期的に流行し、人々を苦しめました。
グラーベン通りの突き当たりには、ウィーンの高級スーパー、ユリウス・マインルがあります。
もともとはコーヒー豆専門店だったため、コーヒーの自社ブランドが豊富です
オーストリアの本気のジャム愛を感じる陳列棚。
果物の味が濃くてブランデーの香りもして、これめちゃくちゃ美味しかったです。今までジャム舐めてた。(まあ舐めますよね、物質的消費には)
でも日本のアオハタ55も十分美味しいです。
中食的なものも売ってます。
ウィーンはオーバーツーリズムで人気レストランは長蛇の列なので並んで疲れたり、ハズレを引くより、こういうのをピックアップしてホテルでゆっくり食べるのもいいかもしれません。
ユリウス・マインルを出て、コールマルクト通り(ブランドショップ通り)を歩いてデメルに向かいます。
デメル本店に到着
17時になりました。朝からずっと歩いて疲れたので、一旦アパートに帰ります。
シュテファン大聖堂が見えてきました
でかいなあ
ハプスブルクの教会なので、屋根にも紋章の鷲がついています。かっこいい。WW2後修復されてますが、それにしてもこの急な傾斜にどうやってタイル張ったんだろう。高所恐怖症でなくても、ふらっとしそう。
正面のファサード
中には翌日入ります
アパートに行くと、今日は流石にパスコード有効になってました。昨日のうちにやってくれよ。
少しゆっくりして、20時過ぎ夕食に向かいました。疲れたので近場で済ませます。
夏時間もありますが、5月なのでヨーロッパは9時ごろまで明るいです。
着きました
昨日は入れなかった、スペアリブの人気店
Mariahilferbräu (マリアヒルファー・ブロイ)
https://maps.app.goo.gl/jBVpUmcg4Ktxax1YA
地元の人にも人気で、シュニッツェルやスパッツェルなどの郷土料理とビールがカジュアルに楽しめます。
酔っ払っておっちゃんたちが陽気にジョークとばしあってました。楽しそうで良き。
少し甘めでローリエなどハーブやスパイスが効いていてジューシーで本当に美味しかった。すごいボリュームだけど、骨もあるので意外にいけた。マヨネーズは苦手なんですが、このソースも美味しかった。このちょっとしたサラダも良くて、玉ねぎの甘さが肉ととてもよくマッチしました。
この日もたくさん歩いたので、ホテルに帰ってソファで来週の授業の確認をしようと思っていたのですが、授業資料を眺めているうちに寝てしまいました。
これでウィーン2日目終了です。今日もお付き合いいただきありがとうございました。