ウィーン3日目の朝です。明日の早朝プラハに出発するので、この日がウィーンの最終日でした。ウィーン美術史美術館の開館に合わせて出発します。
ウィーンはプラットフォームまで洒落てるのかー、と思ったらユーゲントシュティール様式とかいう有名な様式美だそうです。
こんな立派な教会が別に観光名所ってわけでもなくあるからウィーンすごいです。
マリア・テレジア広場までやってきたら、目的地はすぐそこ。
ハプスブルクが威信を掛けて収集したコレクションが所蔵される世界有数の美術館で、この中の一枚が日本に来ると、鑑賞者の長蛇の列ができるような傑作の数々が所蔵されています
中に入るといきなりすごいです。
ある時期に作られた彫刻や絵画では宗教的制約で局部をいちじくの葉で隠してあります。でも却って悪目立ちしてめっちゃ変だよ、と思うんですが。
絵画鑑賞トップバッターはヘビ系美女を欠かせたら唯一無二のクラーナハです。
これは比較的若い頃の作品なので、普通にアダムもイブも美形で、クラーナハ度数10%という感じ。ヘビの描く曲線とイブの髪の曲線が好対照です。
今回、この絵とブリューゲルとベラスケスを見にこの美術館に来ました。
断面がリアルすぎる首。その断面とマッチする鮮やかな衣装と輝く髪。斬首したことでさえなんとも思ってなさそうな冷静な目。素晴らしい絵です。うん、満足。
次は、ブリューゲルです。ブリューゲルは、宗教画以外の世界を初めて提示した画家の一人。画家になる前はアントワープの一流版画出版社でデザイナーをしていたそうで、構図力や視野の広さが絶妙なのはだからか!と納得しました。
めちゃくちゃ緻密です。
こちらは賑やかで生き生きとした絵です。
人物描写が丁寧。こういう気が利く、取り分け係の人っていますよね。
賑やかな生活音が響いてきそうな絵でした。
次は、100デシベルくらいの音量がありそうな絵
83通りの子供の遊び大百科。自分も小学校低学年までは生きるエネルギーを遊びに全振りしてたなあとこの絵を見て思いました。
(出典:https://www.khm.at/objektdb/detail/321/?offset=8&lv=list)
ブリューゲルは戦争や悲劇も一貫した緻密な筆使いで描いてます。
この甲冑よく描いたよ。
次の肖像画は地味ですが、お気に入りです。厳格さみたいな性格が伝わる画。
人物を際立たせる濃い緑の背景もいいです。ホルバインはロンドンのナショナルギャラリー所蔵のこちらの絵で有名な画家です。
次は額縁(?)が一際すごいこの絵画
選ばれし人々が、父(神)、イエス(子)、精霊(鳩)に一度にお会いできるチャンスを激写した場面。秋の叙勲って感じでしょうか(違う)。激写した画家(デューラー)は右下。絵としては正直惹かれないけど、壮大です。
ここからはルーベンスです。
ルーベンスは外交官、画家として大活躍した有能な人物。どこのヨーロッパの美術館に行っても、多くのルーベンスの作品が所蔵されていて、多作な画家だったのだと思います。華麗でドラマチックで柔らかい作風で世界中から愛されています。
ルーベンスの代表作の一つがこちら
これはルーベンスの2番目の妻がモデル。再婚時ルーベンス53歳、エレーヌ16歳。どうなのそれ、とは思うけど。
出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Helena_Fourment
ルーベンスの工房には多くの助手が働いていましたが”私の一番優秀な弟子”と評されたのがヴァンダイクです。
ルーベンスの影響を感じますが、より上品度高し。ヴァンダイクはイギリスで人気があり、イギリス絵画界に大きな影響を与えた人物だそうです。分かる。ルーベンスはイギリスにはちょっと陽気すぎるよね。
お昼にカフェを予約していたので、一度退館しました。それほど遠くない場所なので歩いて向かいます。かつてのウィーン市壁跡であるリング通り(リングシュトラーセ)には、美術館や劇場、官公庁などの公共建造物が並んでいます。
ブルグ劇場を過ぎてすぐのところが目的地です。
Café Landtmann
2023年、創業150周年を迎えたウィーンの老舗カフェ
注文したのは、フランツ・ヨーゼフ1世にちなんだ、オーストリアの伝統的パンケーキ、カイザーシュマーレン。
時間が話していたのと違うのでこの時点で若干違和感あったのですが、最初食べたときに、ん?ちょっと食感が重いんだなと思いました。
でも、こんなもんなのかなと食べ続けていたら、なんと髪の毛発見。すぐに、ボーイをよんで、一応小さな声で
料理に髪の毛入ってました。
と言ったところ、現物を皿の中に確認をして、ボーイが言った一言は、
どうしたいですか?このままでよいですか?それともあなたは新しい皿を望みますか?
え、、、このままでよいかってその発想なんなの。ここ、一応かなりちゃんとした店だよね。
もちろん新しいのをお願いします。
ちょっとお待ちください。
と無表情で、すみませんの一言もないまま(ボーイ的には自分の髪の毛ではないだろうから謝る必要なしということなんだろうけど)皿が下げられました。
その後、15分くらいして新しい皿が来ましたが、やはり最初の違和感は正しくて、出来立てはふわふわで表面がカリッとしていて、とても美味しかったです。しかし、もともと量が多いのに加えて、1皿目で3分の1程食べていたので2皿目は完食できませんでした。付け合わせのベリーとりんごのソースが味変にとてもよいアクセントでした。
会計後、室内にいたベテランの給仕の方に、ご満足いただけましたか?と聞かれたので、髪の毛が入っていて、とても残念だった。しかも最初のものは、作り置きで味が落ちていた。二重に残念だった、と伝えたところ、
それはあなたにとって不運なことでした。しかし、これがあなたが私たちのカフェでする最後の不快な経験になるでしょう。次回からは必ずあなたはここで素晴らしい体験をするということを私が約束します。
と力強く宣言されました。そうかー、なんかリピーターみたいな扱いになっちゃってるけど、もう多分来ないし。
それでにしても、出たよ。
It was unfortunate for you.(それはあなたにとって不運なことでした。)
ほんっと謝らない。別の ”あなたにとって不運なことでした”話はこちらです↓
カフェからまた美術館に戻ってきました。
光の魔術師フェルメールの代表作。
手前のカーテンから椅子、机、画家、モデル、壁と複雑な構図の絵。何気ない日常の風景を何気なく見せる。フェルメールってすごく難易度高いことをやってるらしいのですが、それを感じさせません。それが筆力っていうんでしょうか。
「真珠の首飾りの少女」も素晴らしかった。
こういう絵みると、庶民が一番楽しいよなって思います。
公現節のパイに、豆が当たった人がその日王様になって、最も美しい人を妃にでき、みんなを家来にできるという楽しい風習。日本にも、正月過ぎのイベントとして、ガレット・デ・ロワかなり定着しました。実家でも毎年買ってますが、美味しいですよね。
オーストリアの母
浮気癖もあった夫ですが、夫婦仲はとても良くて、夫亡き後は喪服で過ごしました。晩年まで心配していたのは、遠くに嫁がせた娘3人。あの娘たちは強情で愚かだと嘆きました。特に悩みの種はマリー・アントワネット。ママの話ってつまらないしー、耳タコなんだよねー、という娘に、死ぬ間際までアドバイスや励まし、将来の悲惨な警告を浴びせました。
(出典:https://www.britannica.com/biography/Maria-Theresa)
次はエロ親父
美しい人妻を犯そうと覗き見してる2名のエロ老人。やばいわ。大っぴらに女性の裸体を描けない時代、こういう故事は女性の裸体を描く口実によく使われたそうです。西洋人、裸体ほんと好きだからね。ウィーン美術史美術館も、裸体盛りの宝庫でした。
次はティツィアーノ。特徴は、色使いが美しく、女性も美しい。
強烈な印象を観た者に残すという意味ではこれが一番でした。美術の教科書にも載ってた。
何気にイケメン。目はろうそくです。こういう絵楽しい。
この絵を見て、11月に訪れた明治神宮の新嘗祭の宝船とオーバーラップしました。
カニャッチは、クレオパトラを美しく描こう(加工)大会の優勝最有力候補。
信仰の取っ掛かりとなるようにマリアは美しく幼児イエスは可愛らしく、が基本なんでしょうが、これは陶器のような美しさがあります。
美しい聖母子像といえばやっぱりこれ。
ラファエロは、あまり身分の高くない女性を優美に描くのがとても上手です。額縁もすごい合ってる。いい絵でした。
最後は肖像画の巨匠ベラスケスによるスペインハプスブルク家の皆さんです。
まずはお父さん、フェリペ4世から。
高貴な血に混じりものを入れてはならない、と近親結婚を重ねたハプスブルク家では、子供達が生後すぐ亡くなったり、深刻な障害を持つことに悩まされるようになります。ハプスブルクの顎も濃い血の結果、一族の特徴となりました。フェリペ4世の最初の結婚で生まれた子女で生き残ったのは、8人中、太陽王ルイ14世の王妃となるマリア・テレサのみです。
世継ぎのいないフィリペ4世は、2番目の妻を、オーストリアハプスブルク家から迎えます。相手は早世した息子の嫁になる予定だった自身の姪です。妹の娘との結婚は、近親婚をさらに深めました。その結果、生まれた5人の子供のうち、20歳を超えて生きたのは1男1女のみ。世継ぎとなったカルロス2世は、待ちに待った男子と誕生を喜ばれたものの、病弱、精神障害に苦しみ、王家断絶につながりました。少女の方は、フェリペ4世が溺愛したマルガリータ王女です。
両親の血縁が近いにもかかわらず、マルガリータ王女は健康そのもので、可愛らしい容姿と活発な性格から「小さな天使」と呼ばれスペイン宮廷で愛されました。
血族関係やデリケートな外交問題を抱え、マルガリータ王女は14歳でオーストリアハプスブルク家に嫁ぎます。嫁いだ相手は母方の叔父、レオポルト1世。叔父姪間の近親結婚を繰り返します。一連の肖像画は婚約者の成長記録としてスペインからオーストリアに送られたものです。
叔父レオポルトとの結婚は、幸せなものだったそうですが、6年間の結婚で6人の子供を授かるものの生き残ったのは1名のみ。その悲しみの吐口をユダヤ人に向けてみたり、若さゆえの未熟さや傲慢さから宮廷で嫌われたりもしながら、21歳の生涯を閉じます。愛らしい少女の絵はラヴェルの名曲亡き王女のためのパヴァーヌのインスピレーションにもなりました。その後レオポルト1世は再婚し、3度目の妻との孫がマリア・テレジアになります。
(出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Margaret_Theresa_of_Spain)
ハプスブルクの血の濃さに、ジブリ映画「借り暮らしのアリエッティ」の「君たちは滅びゆく種族なんだよ」というセリフを思い出しました。ダイバーシティって大事。
さて、ウィーン美術史美術館内には、世界一美しいカフェが入ってます。
ここまで見てかなり疲れたので、ハイライトの調度品を手早く回って引き上げることにしました。美術館って見切れないので、どこで妥協するかって大切です。
お客が来たときのみ使用する儀式用の水盤。普段使いには向かないってことだけはよくわかります。機能美って言葉はこの時代なかったんでしょうか。
極め付けはこちら
一度盗まれて、見つかった品だそうです。70億円(当時)の価値だそうです。すご。
オーストリア警察当局は2006年1月21日、ウ…:盗まれた芸術だ! 写真特集:時事ドットコム
Kunstkammer Wien: der Schiffsautomat - YouTube
現実世界に戻ってきました。
見たいものは見たし、ハプスブルクコレクション素晴らしかったです。長くなったので、3日目後半は次回に続きます。
それでは長い投稿にお付き合いいただきありがとうございました。