オランダ留学記

トラブルが寄ってくる体質。2022年8月から2023年7月までオランダの大学に交換留学にきています。純ジャパ。

ロンドン旅行記3の1。大英博物館

もういつの話という感じですが、(昨年12月です)、ロンドン旅行記再開します。

 

ロンドン3日目の朝です。

 

ホテル(大学寮)を出ると、向かいはロンドン大学、SOASが目の前です。

SOASで教鞭を取っていた教授に大学で英語を教えてもらってました。学歴ジョーカーやったら、ぶっちぎり優勝って感じの経歴にかかわらず、思慮深く腰の低い先生でした。

 

大英博物館到着。200万年の人類の歴史がこの中に所蔵されています。入場は無料。運営費は、イギリス政府からの助成金と寄付やチャリティによって賄われています。

 

ちなみに、2021年度大英博物館年次報告書によると、2021年度の収入及び寄付総額は、約1億1千万ポンド(2022年当時1ポンド155円として、約17億円)です。

https://www.britishmuseum.org/sites/default/files/2022-07/british_museum_ara_2021_2022.pdf

盗品博物館とも揶揄される

 

常設展示800万点という膨大なコレクション。

父は、院生時代、研究でロンドン滞在中、休みを全てここに通い続けたそうです。研究室と大英博物館以外どこにも行かなかったと普通に話すあたりが、浮世離れ感を醸し出し、あー、父らしいな、と思いました。

 

といっても、肝心の本人の感想は、

 

色んなものがあって興味深かった。

 

という、行かなくても言えるだろ、それ、という感想でした。

 

では、大英博物館の誇るエジプトコレクションから見ていきます。

アメンホテプ3世
エジプト絶頂期の王の一人。彫刻なのに指先まで神経が行き届いてます。圧倒的威厳。

正面からは、若干雰囲気が違って、まるで就活生のような好青年。

これもアメンへテプ3世。唇の厚さがあって、こちらの方が若干本人寄りらしいです。

ここに所蔵されている彼の像は、ほぼ全て彼自身の命令で作成されたそう。そういうこともわかってるって、後世まで残る言語の力ってすごいです。

 

まるで東大生(ラムセス2世)。エジプト最盛期の王。

こちらもラムセス2世。大英博物館所有の最大のエジプトの彫像。
90歳のご長寿であったらしい。子沢山。二百人くらい。えっ?

右胸に空いた穴はナポレオンが持ち帰ろうとして開けたらしい。説明書きによると、200キロ離れた地で20トンの一枚岩から切り出し運ばせたそう。確かにすごいけど、ピラミッドも同様、その労力、もっと富国に回せただろうに、と思う。(公共事業だったという話もありますが。)

為政者の希望と人々の希望が決して交わらない統制経済のなせる技。

 

早稲田生(アレクサンダー大王

この高田馬場にいそうな、そしてコミュ力高そうな彼は、かの有名な世界征服者、アレクサンダー大王

 

肖像によって別人。こちらはギリシャ風。

そもそも論として、どの彫像も本人に似せようとなど端からしてないのですが。

短い生涯と引き換えに、野心と才能で世界を駆け抜けた。

この人は歴史上でもぶっちぎりかっこいいですよね。

 

 

慶應生。あの、日吉ですれ違いませんでしたか?(トトメス3世)

トトメス3世は軍事の天才であり、戦士王として遠征を重ね、彼の統治時代にエジプト王国の領地は最大になりました。

 

お、ラブラドール発見と思ったら、ライオンだった。と思ったら、アメンホテプ3世だった。

なんでも、王者の象徴ライオンとファラオは一体化して半人半獣(スフィンクス)として描かれたりするけど、こんなふうに完全にライオン化されるのはめずらしい、と説明に書いてありました。

 

 

現代でも美人の域に入りそうな巫女の棺。
このあたりがミイラ製造技術が最高域に達したそうです。

ゲイヤー・アンダーソンの猫。猫はバステト神の化身として大事にされたそうです。今も昔も猫は大事にされる存在のようです。

ところで、この猫と後ろの女性似ていませんか。リアルマクゴナガル先生。

 

カテベットのミイラ

テーベ神殿の聖歌隊員だった女性のミイラ。交差した手には指輪も沢山つけていて、装飾が美しい。スキャンによると、ご高齢で亡くなった方だそうで、これは若い頃の彼女の姿なんだろうか。

 

神官のミイラ。
ずっと見てると、人としての気配みたいなものを感じる。

これは悲しい。子供のミイラ。スキャンにより、8歳から10歳くらいの少年だったそうです。

17歳の少女のミイラもありました。ヒエログリフで17年1ヶ月25日生きた、と記されていたそうで、実際それぐらいの年齢の少女であることがわかったようです。

 

娘が可愛かったんだろうなという親の思いが感じられる、可愛らしいデザインのミイラでした。

 

とんでもない数のミイラがあったのですが(大英博物館所蔵の亡骸、human remainsは6000体)、なにせ元ひと、その存在の重さに酔いそうなので、次に向かいます。

 

次は稀に見る美しい壁画が見つかっているネブアメンの墓より。ネブアメンは王の書記だった人物。

3000年の時を経て、この美しい色彩を見ることができるのは素晴らしい。

おそらく最も有名であろう、野鳥狩り
ネブアメン本人とその妻と娘、猫による共同作業

水面下の魚や様々な鳥、ガマの穂など、母なるナイルの豊かな生態系が感じられる。猫や鳥の動きもダイナミックでとても印象的に残る一枚。

 

ネブアメンによる家畜検査の様子
隊列になったガチョウや牛の描写が素晴らしい

下のヒエログリフには、牛の群れの先頭で跪いている人物が、後方の仲間に向かって命令しているセリフだそうで、しゃべるな、立ち去れ、ネブアメン様はおしゃべりが嫌いだ、と記されているそうです。tomb-painting | British Museum

 

産物運搬の様子。
四人の作業員が、小鹿、ウサギ、麦、野菜を運んでいる様子。小鹿もウサギもまだ生きてるよね、これ。

この壁画シリーズ、動物の描写が細かくて、目がつぶらでめっちゃかわいんだけど、動物好きの人が描いたんだろうか。

 

晩餐会のシーン。
上はカップルで出席。下は女性のみのパーティ。

給仕はおねえさんと少年たち。おねえさんの格好がだいぶセクスィーだけど、この時代は裸に対しておおらかな時代だったそう。ま、エジプト暑いしね。

それぞれの詳しい説明は大英博物館のこちらから見ることができます。

Collections Online | British Museum

 

ネブアメンの墓所の正確な場所ははっきりと特定されておらず、すでに失われたそうです。

 

これらの壁画は全て大英博物館が誇る傑作コレクションの一部です。盗品だろうがなんだろうが、ここまで管理保存してくれるなら文句ないなと思いました。

 

文化財返還問題もありますが、原産国が必ずしも専門のエキスパートを雇えるわけでも管理能力に優れているわけでもないので、(政乱のどさくさで行方不明になることも十分考えられる)、大英博物館ルーブルは人類史というロングスパンで見ると最も妥当な保管場所の一つだと思います。だからこそ、火事とかにはほんと気をつけてほしい(素人に言われんでもしてるだろうけど)。

 

小さい頃ファーブル昆虫記にハマったので、スカラベ(フンコロガシ)はいまだ気になる。

玉(太陽)を転がすスカラベは再生、復活の象徴

現存する最も大きいスカラベ彫刻の一つ、と記されていました。全長153センチ。

とここまできて、ずっと気になっていたこと

ロゼッタストーンどこだ?

何回回ってもないので、館内の職員に聞いたところ、

あ、ロゼッタストーンは有料エリアよ。

なんでも、ロゼッタストーン解読200周年をセレブレートする特別展示のために有料エリアに展示以来始めて移されたそうです(移すなよ!)

ということで、残念ながら見れず。

 

 Coffin of Gua

ヒエログリフで死後の世界への行き方や、供物リスト(この時代の考えによると、魔法のように本物の食べ物に変わり死者が食事に困らない)などが書かれている。旅立ちのために至れり尽くせり。

エジプト文明、小物類もなかなかオシャレです。

スカラベとか守護神とかのペンダントトップ

これネックレス?みたいなやつ普通に女子受けしそう(知らんけど)

ミュージアムショップのレプリカでも大人気。ホルスの目シリーズ。


丁寧に見てると、古代エジプトRoom4だけで1日終わるだろうなという膨大なコレクション量でした。

 

次はアッシリアエリアに向かいます。

古代アッシリアの人面有翼獣
このライオンズはね、キングをプロテクトするマジックの意味で、キングズルームに続くこのドアー(写真奥)のフロントにインストールされていたんだよと、このお父さんも息子にきっと説明中。

脚が5本ありますが、前からみると脚2本。横から見ると4本。別々に見ることを考えて作成されたようです。

精緻にびっしり彫られた楔形文字。何書いてあるんだろう。Google翻訳に掛けたくなる。

 

よく見かけるアッシリアレリーフの一つ。ワシの頭を持つ精霊。
筋肉もりもりの軍人風の彼は、見かけに反していつも植物のお手入れをしているギャップ萌えのヤツ。これはナツメヤシ。なんでも、植物に恵みを与える精霊らしいです。

下段、勝者の顔で、右手を上げてるのは占領した都市に入城する王。
上段は押収物の羊と捕虜そして監視兵。

監視兵の余裕の表情に比べて捕虜の表情はやっぱ暗いー。2750年前の彫刻師の方、ちゃんと表情まで彫り分けたんですね。

 

アッシリアの王の一人。アッシュル・ナツィルパル2世。前出のライオンズがいた王宮の主人。

 

これらが発見されたニルムド遺跡はアッシリア滅亡後、完全に地に埋もれたそうです。それから2500年後の1845年、外交官にして歴史家、オースティン・ヘンリー・レヤードによって発掘され、彼のピックアップで目ぼしいものは大英博物館へ。

発掘の様子。王宮の壁画や、彫刻の頭がごろごろ見つかる

 

2015年、ニルムド遺跡は偶像崇拝の対象としてISIL(イスラム国)によって破壊されました。これらをイギリスに運んでおいたオースティン、結果的にまじでグッジョブ👍

www.bbc.com

 

 

 

さてここまで2時間弱。これだけ見ても、正面入ってすぐの左の展示室数室をウロウロしただけ。どんだけ広いんだ。ここは。

もう疲れたよ、サンタマリア。

 

 

ここからはサクサク進みます。古代ギリシャ、ローマセクション。

ギリシャの壺シリーズ。進化順。

この幾何学様式はアテネの壺の特徴だそう。そうなんだ。

壺の注ぎ口の模様が、ラーメン丼の模様を彷彿させるな、と思ったら、やっぱり雷のデザイン。ギリシャ雷文というそうです。

 

これは黒絵式の壺。模様を黒で描くスタイル。

こちらは赤絵式。ヘレクレスとライオン。

時代が進むと、絵付けもどんどん豪華に。

ギリシャ彫刻ももちろんたくさん

おっと、こんなところにジュードロウ発見

 

野球帽をかぶってヤンキーススタジアムでビールを飲んでそうな雰囲気も醸し出す彼は、アテネの全盛期を率いた名将軍にて名政治家、ペリクレス

こちらはローマ皇帝ルキウス・ウェルス。義父で五賢帝の一人、マルクス・アウレリウスと共同皇帝でした。

次は、今月(7月)がバースデーボーイであるかち割れのこの方

伝説の男、シーザー。ご存知の通り、July は彼の名前ジュリアスから。
(説明に、多分シーザーって書いてあるけど)

ときたら、こちらはAugustの語源、アウグストゥス

実物サイズのアウグストゥスも。

等身大サイズで、さらに目にガラスと石を用いてるからより生きてる感じが増した、そうです。紀元前25年〜27年にエジプトで作られ、1910年スーダンで見つかり、渡英しました。
遠征ご苦労様。

ここでちょっとカフェで休憩。

一律3.35ポンド。焼き菓子が並んでいます。

2023年7月2日現在の為替レートだと1ポンド=183円くらいなので(昨年12月は155円くらいでした)、3.35ポンドだと600円強。このマフィンに600円は個人的には出せない。円換算すると最近は購買欲が失せる毎日です。

でも、イギリス人にとっては、1ポンドは体感日本の100円なので、彼らにとってこのスウィーツは335円となり、カフェ値段としては普通にありなんだろうなと思います。円安つら。

 

ラテを買いました。美味しかったです。

それではまた博物館見学再開です。

古代ヨーロッパセクション
人類の歴史はいつだって戦いの歴史

金貨(奥は銀貨)がまばゆい。今でも、テムズ川底は掘ればザクザクだと言われてます。

 

アングロサクソンセクションには大英博物館の目玉展示の一つ、

ルイス島のチェス駒があります。

12世紀に作成され、駒はセイウチの牙でできているそうです。

この独特の表情が世界中の人をツボらせる

Photo from the British Museum

https://www.britishmuseum.org/collection/object/H_1831-1101-84

 

こちらはビザンツ帝国東ローマ帝国)セクション

ゴールドのボディチェーン

ビザンツ文化は装飾がとても美しい

この時点で14時近く。16時までにウエストミンスター寺院を見ておきたいので、日本セクションを見て帰ることにしました。

 

埴輪

ソンブレロを被っていらっしゃるのでメキシカンかと思ったら、日本の方でしたか。

 

静かな威厳で東洋の神秘を感じさせる、文殊菩薩

日本コーナーはいつもとても人気で、なぜか誇らしい

 

出てきました。疲れた。

父ではないけど、見るべきものがありすぎて、感想が色々あってすごかった、になりそう。

記念撮影中の一家は、ベビーカーに携帯を固定して記念撮影。ほう。


今生きてる自分たちって、これらを礎に人類の歴史の最前線を歩いてんだな、と思いました。

見きれなかったものがあまりにもありすぎるので、ここはいつか再訪したいと思います。

 

それでは、今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。