もういつの話という感じですが、(昨年12月です)、ロンドン旅行記再開します。
ロンドン3日目の朝です。
ホテル(大学寮)を出ると、向かいはロンドン大学、SOASが目の前です。
大英博物館到着。200万年の人類の歴史がこの中に所蔵されています。入場は無料。運営費は、イギリス政府からの助成金と寄付やチャリティによって賄われています。
ちなみに、2021年度大英博物館年次報告書によると、2021年度の収入及び寄付総額は、約1億1千万ポンド(2022年当時1ポンド155円として、約17億円)です。
https://www.britishmuseum.org/sites/default/files/2022-07/british_museum_ara_2021_2022.pdf
常設展示800万点という膨大なコレクション。
父は、院生時代、研究でロンドン滞在中、休みを全てここに通い続けたそうです。研究室と大英博物館以外どこにも行かなかったと普通に話すあたりが、浮世離れ感を醸し出し、あー、父らしいな、と思いました。
といっても、肝心の本人の感想は、
色んなものがあって興味深かった。
という、行かなくても言えるだろ、それ、という感想でした。
では、大英博物館の誇るエジプトコレクションから見ていきます。
ここに所蔵されている彼の像は、ほぼ全て彼自身の命令で作成されたそう。そういうこともわかってるって、後世まで残る言語の力ってすごいです。
右胸に空いた穴はナポレオンが持ち帰ろうとして開けたらしい。説明書きによると、200キロ離れた地で20トンの一枚岩から切り出し運ばせたそう。確かにすごいけど、ピラミッドも同様、その労力、もっと富国に回せただろうに、と思う。(公共事業だったという話もありますが。)
為政者の希望と人々の希望が決して交わらない統制経済のなせる技。
この高田馬場にいそうな、そしてコミュ力高そうな彼は、かの有名な世界征服者、アレクサンダー大王。
肖像によって別人。こちらはギリシャ風。
そもそも論として、どの彫像も本人に似せようとなど端からしてないのですが。
この人は歴史上でもぶっちぎりかっこいいですよね。
トトメス3世は軍事の天才であり、戦士王として遠征を重ね、彼の統治時代にエジプト王国の領地は最大になりました。
なんでも、王者の象徴ライオンとファラオは一体化して半人半獣(スフィンクス)として描かれたりするけど、こんなふうに完全にライオン化されるのはめずらしい、と説明に書いてありました。
ところで、この猫と後ろの女性似ていませんか。リアルマクゴナガル先生。
テーベ神殿の聖歌隊員だった女性のミイラ。交差した手には指輪も沢山つけていて、装飾が美しい。スキャンによると、ご高齢で亡くなった方だそうで、これは若い頃の彼女の姿なんだろうか。
娘が可愛かったんだろうなという親の思いが感じられる、可愛らしいデザインのミイラでした。
とんでもない数のミイラがあったのですが(大英博物館所蔵の亡骸、human remainsは6000体)、なにせ元ひと、その存在の重さに酔いそうなので、次に向かいます。
次は稀に見る美しい壁画が見つかっているネブアメンの墓より。ネブアメンは王の書記だった人物。
3000年の時を経て、この美しい色彩を見ることができるのは素晴らしい。
水面下の魚や様々な鳥、ガマの穂など、母なるナイルの豊かな生態系が感じられる。猫や鳥の動きもダイナミックでとても印象的に残る一枚。
下のヒエログリフには、牛の群れの先頭で跪いている人物が、後方の仲間に向かって命令しているセリフだそうで、しゃべるな、立ち去れ、ネブアメン様はおしゃべりが嫌いだ、と記されているそうです。tomb-painting | British Museum
この壁画シリーズ、動物の描写が細かくて、目がつぶらでめっちゃかわいんだけど、動物好きの人が描いたんだろうか。
給仕はおねえさんと少年たち。おねえさんの格好がだいぶセクスィーだけど、この時代は裸に対しておおらかな時代だったそう。ま、エジプト暑いしね。
それぞれの詳しい説明は大英博物館のこちらから見ることができます。
Collections Online | British Museum
ネブアメンの墓所の正確な場所ははっきりと特定されておらず、すでに失われたそうです。
これらの壁画は全て大英博物館が誇る傑作コレクションの一部です。盗品だろうがなんだろうが、ここまで管理保存してくれるなら文句ないなと思いました。
文化財返還問題もありますが、原産国が必ずしも専門のエキスパートを雇えるわけでも管理能力に優れているわけでもないので、(政乱のどさくさで行方不明になることも十分考えられる)、大英博物館やルーブルは人類史というロングスパンで見ると最も妥当な保管場所の一つだと思います。だからこそ、火事とかにはほんと気をつけてほしい(素人に言われんでもしてるだろうけど)。
小さい頃ファーブル昆虫記にハマったので、スカラベ(フンコロガシ)はいまだ気になる。
とここまできて、ずっと気になっていたこと
ロゼッタストーンどこだ?
何回回ってもないので、館内の職員に聞いたところ、
あ、ロゼッタストーンは有料エリアよ。
なんでも、ロゼッタストーン解読200周年をセレブレートする特別展示のために有料エリアに展示以来始めて移されたそうです(移すなよ!)
ということで、残念ながら見れず。
エジプト文明、小物類もなかなかオシャレです。
丁寧に見てると、古代エジプトRoom4だけで1日終わるだろうなという膨大なコレクション量でした。
次はアッシリアエリアに向かいます。
監視兵の余裕の表情に比べて捕虜の表情はやっぱ暗いー。2750年前の彫刻師の方、ちゃんと表情まで彫り分けたんですね。
これらが発見されたニルムド遺跡はアッシリア滅亡後、完全に地に埋もれたそうです。それから2500年後の1845年、外交官にして歴史家、オースティン・ヘンリー・レヤードによって発掘され、彼のピックアップで目ぼしいものは大英博物館へ。
2015年、ニルムド遺跡は偶像崇拝の対象としてISIL(イスラム国)によって破壊されました。これらをイギリスに運んでおいたオースティン、結果的にまじでグッジョブ👍
さてここまで2時間弱。これだけ見ても、正面入ってすぐの左の展示室数室をウロウロしただけ。どんだけ広いんだ。ここは。
ここからはサクサク進みます。古代ギリシャ、ローマセクション。
ギリシャの壺シリーズ。進化順。
壺の注ぎ口の模様が、ラーメン丼の模様を彷彿させるな、と思ったら、やっぱり雷のデザイン。ギリシャ雷文というそうです。
ギリシャ彫刻ももちろんたくさん
次は、今月(7月)がバースデーボーイであるかち割れのこの方
実物サイズのアウグストゥスも。
ここでちょっとカフェで休憩。
2023年7月2日現在の為替レートだと1ポンド=183円くらいなので(昨年12月は155円くらいでした)、3.35ポンドだと600円強。このマフィンに600円は個人的には出せない。円換算すると最近は購買欲が失せる毎日です。
でも、イギリス人にとっては、1ポンドは体感日本の100円なので、彼らにとってこのスウィーツは335円となり、カフェ値段としては普通にありなんだろうなと思います。円安つら。
ルイス島のチェス駒があります。
この独特の表情が世界中の人をツボらせる
この時点で14時近く。16時までにウエストミンスター寺院を見ておきたいので、日本セクションを見て帰ることにしました。
埴輪
出てきました。疲れた。
父ではないけど、見るべきものがありすぎて、感想が色々あってすごかった、になりそう。
今生きてる自分たちって、これらを礎に人類の歴史の最前線を歩いてんだな、と思いました。
見きれなかったものがあまりにもありすぎるので、ここはいつか再訪したいと思います。
それでは、今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。