オランダ留学記

トラブルが寄ってくる体質。2022年8月から2023年7月までオランダの大学に交換留学にきています。純ジャパ。

世界遺産キンデルダイク、オランダの治水の歴史

大変ご無沙汰しております。

さて、早いもので日本帰国まであと三週間ほどになりました。いいこともそうでないことも沢山あったな、と考え深いです。(まあ、どこにいても日常ってそんなものかもしれませんが)

 

さて、帰国前に是非行っておきたいと思っていた、ユネスコ世界遺産にも登録されているキンデルダイクへ行ってきたので、今回ご紹介したいと思います。

www.holland.com

オランダといえば、チューリップと風車というのが、2大イメージであると思うのですが、まさにその通りで、特に風車はオランダの日常風景に溶け込んでおり、電車や車から眺める郊外の景色は見渡す限りの平坦な土地、そしてその中に認識できる高層建造物は、ちょっとしたビルをのぞき、教会と風車の2択と言ってもよいほどです。

 

そんなオランダにおいても、動力源が蒸気機関、電力ポンプと移行するにつれて、風車は姿を消し、現存する風車数は1000基ほど、19基もの風車群が現存する場所はキンデルダイクのみになりました。

 

 

さて、キンデルダイクへはロッテルダムから水上バスを使用するのがおすすめです。21番はキンデルダイクへの直行便になっています。

Kinderdijk - De Waterbus

時刻表はこちら

Waterbus dienstregeling - De Waterbus

日曜日(zondag)は時間が違うので注意が必要です。ちなみに、オランダ語で日曜を意味するzondagは、博多どんたくの”どんたく”(休みの日)の由来になっています。

 

 

始発はエラスムス橋駅ですが、私は大学最寄りのカペル・アン・デン・アイセル駅(Capelle aan den IJssel)から乗船。

 

最近改修工事をしたらしく、とっても近代的で綺麗な桟橋でした。

電車同様、船にも自転車を積み込めます。このバス停でとても品の良い女性に話しかけられたのですが、これからビネンロッテの市場に行くの!お先にね!と自転車ごと乗り込んで行きました。

 

しばらくすると、キンデルダイク行き(21番)もやってきたので乗船。

朝一(8:40)のバスだったため空いていました。まあ、土曜の8時台はヨーロッパ人にとって体感朝5時か6時だろうから、こんなものだろう。

船内にいるにはあまりに良い天気なのでデッキに移動。

ノアの方舟発見

木々も美しい

20分ほどの乗船で、キンデルダイク駅に到着しました。

この自転車の方々は、折り返しこの船でロッテルダムに向かうようです。

オランダを代表する観光地にはオランダを代表するキャラクターももちろんいらっしゃいました。オランダでは、ナインチェnijntje”、こうさぎちゃんと呼ばれてます。

それにしても、ミッフィーにしろ、キティにしろ、出銭ランドのアニマルたちの愛想の良さとは対局的な表情だと思うんですが、愛嬌と人気は別なのが興味深いところです。


ビジターセンターまでやってきました。奥に風車群が見えてきました。よく水車と間違えやすいのですが、北海からの強い風を動力源とする風車です。今もオランダは風力発電が盛んです。

ビジターセンター前を通り過ぎると、これぞオランダという風景が広がっていました。

近所のおじいちゃんも犬を連れて日課の散歩。ここ毎日の散歩コースってめちゃくちゃ羨ましい。

 

第一印象は、でかっ。写真では分かりにくいのですが、風車の大きさに驚かされます

風車の羽一枚の長さは大体15メートル。日本の2階建の建物の高さは大体7メートルと言われるので、羽一枚で4階建の建物の高さとほぼ同じになります。

 

故に羽が一番上に来ると、風車の大きさは土台の高さも鑑みて、10階建ての建物とほぼ同じ高さになります。

この巨大な羽で、毎分1万リットル以上の水を排水していたそうです。(今もメインの排水設備ではないですが、しているそうです)

この風車群は300年ほど前に建造されました。
あ、鴨発見

晴れて、風がそよぎ、鳥の声が聞こえて、癒される

小さな跳ね橋も架かってます

キンデルダイクは散策するだけなら無料ですが、風車内の博物館見学やボートツアーなどに参加する場合は大人16ユーロです。

せっかくなのでチケットを購入して風車内も見学。

間近で見る羽の迫力、やばい。

これぶつかったら死亡案件なんですけど、と言ったら、風車の管理人の方が真顔で、そうだよ、と言ってました。風車守の人々は家族で風車に今も昔も住んでいるのですが、羽側の入り口は、絶対絶対出入りしないよう子供たちなど家族は徹底して教えられているそうです。

 

風車への出入りはここから



1階は居住スペースになっています。

薪ストーブの上には、鍋やアイロンも。

食器棚。一番下にはコーヒー缶やコーヒーミル。コーヒーが好きなオランダ人らしい。中段にはまさにこの風車が描かれた陶磁器も収まっていました。

 

寝心地の良さそうなベッドも。

 

羽が横切るたびに部屋が翳るのも良き。

 

メモし忘れていつのものか分かりませんが、昔のキンデルダイクの写真。不断の努力で守ってきた変わらない風景。

風車の入り口で撮った風車守の家族の写真。

現存するほとんどの風車には、現在も人々が暮らし、風車のメンテナンスをしています。

 

急な階段を登って2階へ

 

2階からの景色。賑やかな声がすると思ったら中国系の観光客がやってきました。

3階に続く階段

3階からはミルが回ってるのが見えます。巨大歯車がガラガラなっていました。すごい迫力。排水が主目的ですが、同時に製粉なども行っていたそうです。

 

降りてきました。



子育てシーズン。カルガモの親子が沢山いました。

跳ね橋を渡ってボート乗り場に向かいます

どこを切り取ってもポストカードのような風景が続く

 

ボートに乗船。正直景色はそれほど変わりませんが、ガイドさんの話がよかった。色々なお話を聞けました。

この水車群によってこの周辺の水面は1メートル以上下がったそうです。

 

また、キンデルダイクはkinder(子供の)dike(堤)という意味ですが、17世紀の大洪水の際、猫に守られた赤ん坊の乗ったゆりかごがこの堤に辿り着いたのが由来であると言われているそうです。

 

ちなみに、日米修好条約批准のため、福澤諭吉慶應内では呼び捨てにはされず、福沢先生と呼ばれてます。)などを乗せ太平洋を渡った咸臨丸は、ここキンデルダイクで起工され、日本に送られました。咸臨丸を製造した造船会社は現在もキンデルダイク造船業を営んでいます。

 

司馬遼太郎がオランダ紀行でもこのことに触れています。だいぶ古い本ですが、内容的には全く色褪せない名著なので、オランダに興味がなくとも読む価値は多いにあると思います。特にゴッホの話は良かった。

 

 

また資金繰りの話も出ていました。

世界遺産に登録されているゆえに営利目的の商業施設の建設や開発が難しいことに加え、資金も限られ、風車の維持存続という困難にいつもさらされていると話していました。

 

ここにいる皆さんはお金を払ってチケットを購入してくれたので、私たちへの寄付になります。ありがとうございます、というのを聞いて、正直チケット代高いんだよな、と思ってたのですが、やっぱ購入してよかった、と思いました。

 

キンデルダイクの川向いには牛たちがいた。これも非常にオランダらしい風景。

時折風に乗ってくるかぐわしい香りはやはり君たちだったか。

帰路に着く前に、少し街散策。日本もそうですが、オランダも郊外には、のどかでかわいらしい町が点在しています。

このあたりに住むと、世界遺産が借景という贅沢さ

手入れの行き届いた美しい家々が並んでいます

清潔で美しい街並み

評判のパン屋さんがあるので入ってみます

 

焼きたての手作りパンやクッキーが並んでいます。他にもケーキやサンドイッチやアップルパイなどもたくさんありました。

パンを買って、桟橋で水上バスを待ちながら食べましたが、ほっとするやさしい味でした。おいしかった。

帰りは市場に寄ろうと思ったので、終点エラスムス橋まで乗りました。

 

 

エラスムス橋。ロッテルダムを象徴する橋で、ここからのビル群の夜景は素晴らしいです。オランダ最大の花火大会の会場にもなっています。


長閑な風景とは裏腹に風車は、水に対し背水の陣で臨むオランダの歴史そのものです。今回オランダの残っていた宿題の一つが片付きました。

 

それでは最後までお付き合いいただきありがとうございました。